創業からこれまでの道のりをCEO二人に語って貰いました。
スタートアップならではの手探りの苦悩と面白さを語っています。
大学在学中、産総研にてエンジニアとして従事、(株)スポットライトにて超音波解析技術を用いたデバイス、サーバサイド開発。2015年当社創業。ソフト/ハード両面でプロダクト開発をリード。
大学在学中よりスタートアップ立上げ等に携わる。マッキンゼーを経て2010年(株)チケットスターを創業。設立3年で取扱高50億、黒字化を果たし、楽天グループに売却。2015年当社を共同創業。
松居:2015年春~夏くらい、自分が次にやりたいことを検討していたタイミングと、青山さんがスポットライト(前職)を退社したタイミングが合ったんだよね。
その時期、次の仕込みのために秘密基地として借りた松濤のマンションがあって。ネタ帳にはいくつかの起業アイディアがあった。そこにはハードウェアを活用する今のPocket Changeサービスの原案のようなものもあった。そこに青山さんが遊びに来たんだよね。
青山:試しにペリカノ(硬貨を仕分けるデバイス)を取り寄せて、試作を始めましたよね。最初はMacで動かしていたが、それがAndroidになり、最終的にWindowsで動くマシンになりましたね。
松居:そうそう。当時はまさか自分たちでハードウェアを作れるとは思っていなかった。しかし、青山さんがあっさり動かしてしまった。それを空港に持っていったら反応が良かったので創業という運びになったんだよね。
ネタ帳にあった『余った外貨を回収・交換するサービス』と青山さんの強みの『ハードウェアエンジニアリング』が融合して『Pocket Change』が生まれた。
松居:「プロダクトとして出せそう」となったときにプロダクト発表のプレスリリースを出したらそれが物凄くバズった。Yahoo!ニュースのトップを飾り、著名起業家にもリツイートされた。でも、諸々の提携先と交渉が長期化してしまっている頃で、メディアからの期待だけが膨らんで、僕としてはプレッシャーだった。
青山:大変そうでしたね。俺や他のメンバーは純粋に注目を浴びて喜んでたけど。
松居:(リリースを前に)プロダクトがイケると思ったきっかけは2つあった。まさかハードウェアが自分たちで作れるとは思っていなかったが、作ってしまった人(青山)がいた。それがまず最初の「イケる」と思ったタイミングはそこ。当時、ハードウェアスタートアップにとって追い風が吹いていて、プロトタイプも作りやすい土壌が整い始めていたのもある。ビジネス観点で言えば、設置場所がとれるかとれないか。羽田空港に置けそうだったので「イケる」と思った。
青山:ハードウェアを作れる体制だったので、あとはビジネス面でのライセンス、信用、交渉の問題という認識でしたね。
松居:モノ(ハードウェア)、設置場所、交換先(電子マネーなど)があって、最初の数年でこれらを拡充していった。サービスが回るようになって、あとはオペレーション最適化の課題が残ったが、それもこのコロナ禍の間に整えることが出来た。
青山:あとは粛々と海外旅行が戻ってくるのを待つだけ、ですね。
松居:「現金のジャラジャラをなくそう」というミッションを変えずに新しいことをするとして、色々な議論をした結果Pokepayになったんだよね。
青山:最初は貯金サービスにしたかったんですよね。ネットに接続できる貯金箱を配布して、お金が貯まったら貯金箱を送ってもらい、Amazonギフトカードと交換できるサービス。それ以外にも硬貨をベースにしたサービスをいくつも検討した。でも、ただ硬貨は輸送コストがかかるし、そのコストを差し引いて利益を取れるビジネスモデルにならなかった。
試行錯誤の結果、「オリジナル電子マネーを作るサービス」になった。まだPayPay、メルペイもない黎明期。
松居:きっかけは、2018年頭にレジ端末を手がけていた企業と協業して、レジのおつりをハウスプリペイドにチャージするサービス(システム)を作ったんだよね。
青山:試行錯誤していた時期が長かった。議論1年、プロトタイプに1年。合わせて2年くらいかかってやっとPokepayの最初の導入先が決まった。
歯車がうまく回り始めたと感じたのは、2017年頭に深町さん(現・Pokepayリードエンジニア)がジョインしてくれて、さくっとプログラムを作ってしまったとき。
その場その場で顧客の声を聞きながら軌道修正を繰り返し、地道に改善を続けていった結果、今のPokepayの形になっていったんですよね。
松居:メモリアルなイベントで最初に出てくるのは、やっぱり一番最初の羽田空港の設置かな。行ける人全員で行ったよね。
松居:あとは、電子マネー交換に利用する端末の検定を受けに実際のPocket Change筐体を台車に乗せて持って行ったことかな。
松居:コロナ前は海外出張よく行っていたので楽しかったな。ハワイ、チャンギ、桃園、タイ、韓国など。Pokepayがグローバルになれると海外に行くことが増えるかもしれない。
青山:大変だった思い出しか思いつかないなぁ…(笑)。楽しい思い出としては、関空に行ったとき。夜中に広い空港を駆け回って4台設置した。
青山:Pokepayの地域通貨の初案件のときも大変だった(笑)。とくに翌日からのサービス開始に向けてPocket Change端末を駅構内に設置する作業のとき。Pocket Change端末から地域通貨へのチャージがうまくできず、深夜まで大変だった。駅が真っ暗になって、雪にも降られる中、関係者全員が息をのむ中でサーバーを直した。焦りでいっぱいいっぱいだった(笑)
なんとかサービスインできたので、今振り返ってみると良い思い出ですね。
松居:ありそうでなかったサービスを、ハードウェアも含めて自分たちで設計・開発・保守ができるところは、クライアント企業から信頼を寄せてもらえるところ。取引先審査が厳しい大企業や大規模自治体や公共施設にも、端末やPokepayサービスを導入してもらえるのは強み。
ソリューションがレガシー化している領域にあって、柔軟で機動的で安価で、そしてカッコいい。デザインがカッコいいことが採用の決め手になりました、って自治体に言われたこともあった。スタートアップの良さが活きていると思う。
青山:2018年にグッドデザイン賞を受賞したとき、外観デザインについてあまり良く評されなかったが(笑)、六本木ヒルズに4〜5台並べたときに海外の旅行客からは「クールだね」と言って貰えましたね。
松居:グローバルという意味で言うと、海外籍スタッフが8人(36名中)いるよね。社内はグローバル。その多様性は、元々設計思想として埋め込まれている。だから、プロダクトもインターナショナルな目線から見てもわかりやすい。
青山:「グローバル」「多様性」は実際のプロダクトに組み込まれているし、未知の領域を恐れずにやると海外進出できるサービスだと思っている。実際にやってみれば大変なこともたくさんあると思うが、恐れずにやっていきたいと思う。
松居:目指す世界は『現金邪魔→キャッシュレス化』だけでない。色々なサービスがどんどんD2C化する中で、決済だけは外部の第三者にゆだねられてしまっている。ここをオウンド化すべきだと思っている。どんなビジネスでも、決済という顧客接点は必ずある。それを自前にして、お客さんとの接点を作っていくことを支援したい。
青山:オウンド化は最近はっきりしたトレンド。それに気付いてからPokepayはここ最近2年くらい一貫している。独自の経済圏、コミュニティ、ファンマーケティングを支援していきたい。
松居:「国が違うから」「コインだから」という理由だけで「使えない」「両替もできない」状態だった外貨現金(キャッシュ)を、電子マネー(デジタル)に交換させ流動化させるところから開始したPocket Change。そして、デジタルバリューを簡単・自由に発行できるサービスとして立ち上げたPokepay。今後、それだけに留まらず、あらゆるバリューが相互に交換・流通可能な世界観を実現していきたいね。